<もぐらのバイオリン>
デイビット・マクフェイル 作・絵
野中ともそ 訳
「その ねいろは、もぐらが いままでに きいた なかで いちばん うつくしい ものでした。」「おれも あんなふうに おんがくを かなでて みたいな」
テレビで見たヴァイオリンに魅せられたもぐらくん。早速手に入れ、練習を開始。しかし、思ったような音がでません。挿し絵の小さな木にいる鳥がその音にびっくり。もぐらくんは知りませんが、小さな木はもぐらの家にまで根をのばしていて、その根から外の世界にヴァイオリンの音が聞こえるようになっていました。「もぐらは くりかえし くりかえし ひきました。」
長い年月が流れるその様子は、挿し絵の木がだんだんと大きく成長する様子でわかります。
「もぐらは いままでに ないほど しあわせでした。ひるまに トンネルを ほりながら、こんや ひくつもりの きょくを ふふふん、 と くちずさみます。」
もぐらくんは 一人、地下に住んで、ヴァイオリンを楽しんでいますが、時々考えます。
「ひとびとの ために えんそうするのって どんな かんじなんだろう。」
音楽の素晴らしいパワーをいっぱいもらい、満タンになったもぐらくん。きっとそのパワーを他の人にも分けてあげたくなったのでしょうね。
さてさて、地上では、大きく育った木の周りでみなが、もぐらくんの演奏を楽しんでいます。しかし、そんな事になってるとは夢にも思わないもぐらくん。
「じぶんの おんがくが ひとびとの こころに とどき、いかりや かなしみを とかしてしまうこと さえも おもいうかべました。」そして「おれの おんがくが せかいを かえられるかもしれない!」と夢見ます。
実は、そんな思いをこめて地下でヴァイオリンを弾いている時 地上では、まさに戦争が、、、、。
しかし、木から聞こえるもぐらくんの音楽を聞いて兵士たちは戦意喪失。握手し、抱き合って仲良くなります。
「おれときたら なんて ばかなんだろう」
「おれの おんがくが そんな ことを できるだなんて。だれも 聞いたことさえないのに。」
地上でのことなど夢にも思わず、一人、ヴァイオリンを弾いてます。
そういえば、こんな話を生徒さんから聞きたことがあります。
ある日、中学生くらいの男の子が自転車乗って自分の家を通り過ぎた時、鼻歌を歌っていたのですが、なんと!!!その曲、今まさに自分が練習してる曲!!!
もぐらのバイオリンみたいですね。私も近所の家から聞こえるハーモニカの音に癒されたことがあります。なんとも素敵な一瞬でした。
いろんなこと夢見ながら。憧れながら。
今日もヴァイオリン、明日もヴァイオリン!!リンリンリン!!!